吉川医薬経済レポート 2005年1月号

第2世代尿酸産生抑制剤TMX-67(febuxostat)



1.TMX-68の米国申請

 04年12月17日の業界紙は,帝人ファーマとTAPが高尿酸血症治療薬TMX-67をFDAに申請したと報じた(日刊薬業,日経産業新聞,化学工業日報など)。

 同剤は第2世代の尿酸産生抑制剤として,かねてから注目されており,国内では04年4月に帝人が申請していた。 今回のFDA申請で上市へ向けて一層拍車がかかるであろう。

 TMX-68の要目をまとめてみよう。

項目内容
治験コード
(商品名,一般名)
TMX-67
(商品名:未定,一般名febuxostat)
開発企業帝人ファーマ(オリジン),TAP(米国で共同開発)
剤名第2世代(非プリン系)尿酸産生抑制剤
作用機作キサンチンオキシダーゼ脱水素酵素(XOD)を阻害し尿酸合成を抑制する。
適応症高尿酸血症,痛風の発作予防
副作用非プリン系であるため,排泄遅延による副作用は少ない。
剤型錠剤
用法・用量1日1回,経口投与
開発状況日本:申請中(帝人ファーマ)(04年4月申請)
米国:申請中(帝人ファーマ,TAP共同)(04年12月申請)
欧州:臨床準備中(仏Ipsen社へ導出)
日刊薬業,日経産業新聞,化学工業日報(それぞれ04年12月17日号),New Current, 15(2), 2004, 2〜6を参考にして作成した。



2.痛風・高尿酸血症の治療薬とTMX-67

 病態によって,さまざまな薬物が使用される。 一般的な治療薬選択についてまとめてみる。

大分類中分類薬物例(商品名)
痛風関節炎
(発作)
急性関節炎の前兆期コルヒチン(前兆を自覚した時に服用)
急性関節炎(極期)非ステロイド抗炎症薬:ナプロキセン(ナイキサン),プラノプロフェン(ニフラン)など
急性関節炎(炎症の著しい場合)プレドニゾロン,パルミチン酸デキサメタゾン(リメタゾン),トリアムシノロンアセトニド(ケナコルト)など
高尿酸血症痛風・高尿酸血症(排泄低下型)ベンズブロマロン(ユリノーム)(副作用注意),クエン酸カリウム・ナトリウム(ウラリット)(尿アルカリ化)
痛風・高尿酸血症(産生過剰型,また尿路結石合併型)アロプリノール(ザイロリック)
痛風腎・高血圧合併例アロプリノール(ザイロリック),
マレイン酸エナラプリル(レニベース)
高尿酸血症・高脂血症合併例フェノフィブラート(リパンチル)など
山中寿,痛風・高尿酸血症,今日の治療指針 2004年版,513〜514を参考にして作成した。

 尿酸過剰産生型の高尿酸血症,尿路結石合併のある高尿酸血症にアロプリノールが唯一の治療薬として使用されているが,同剤はプリン誘導体であり腎不全を伴う患者では排泄遅延を引き起こし副作用の原因となっていた。 TMX-67は非プリン系の尿酸産生抑制剤であって,プリン系による副作用が大幅に減少すると期待されまさに医療の期待に応える新薬である。 また,アロプリノール(ザイロリック)が1日2〜3回服用に対して,TMX-67は1日1回服用であり,コンプライアンス向上と患者の利便性の面からも歓迎される薬剤である。

なお,痛風・高尿酸血症の治療に関して,日本痛風・核酸代謝学会から治療ガイドラインが示されている。 (例えば,今日の治療指針 2004年版,1560〜1564を参照)



3.痛風・高尿酸血症治療薬の市場とTMX-67

 ZyloricはGlaxo SmithKline社オリジンの製品で1966年に上市され,1998年の売上152百万ドルと発表されている。 その後は特許失効もあり,売上高の発表はない。

 ザイロリックは日本では,同社日本法人が1969年に発売しており,03年の売上は薬価ベースで150億円と推定されており(化学工業日報,04.12.17.),後発品,およびその他の製品を含めて痛風・高尿酸血症治療薬市場は230億円程度と推定されている(New Current,15(19), 2004, 2〜11)。

 TMX-67は帝人ファーマによれば,米国で数百億円,日本で百億円以上,欧州で数十億円を見込んでいるとのことである(化学工業日報,04.12.17.)。 ザイロリックに対する優位性――安全性,利便性――を考慮すると,予期せざる事態の発生がない限り,その程度の売上は確保できると考えられる。

 TMX-67は新ジャンル医薬品ではないし,また1,000百万ドル超のブロックバスターにはならないであろう。 しかし,生活習慣病の一つである痛風・高尿酸血症の30数年ぶりの新しい治療薬として着実な売上を確保してゆくものと考えられる。



4.痛風・高尿酸血症治療薬の開発動向

 キサンチンオキシダーゼ脱水素酵素(XOD)阻害剤と,尿酸をアラントインへ酸化して排泄する尿酸酸化酵素製剤の開発が進められている。 後者は癌患者の血漿中尿酸値の管理に使用される。

治験コード,
商品名
一般名開発企業開発段階備考
Y-700 三菱ウェルファーマP-1 
ElitekrasuburicaseSanofi Aventis日本:P-2
欧米:発売
遺伝子組換え尿酸酸化酵素
癌患者の血漿中尿酸値管理
Puricase Savient欧米:P-2遺伝子組換え尿酸酸化酵素
癌患者の血漿中尿酸値管理
各社ウェブサイト,報道記事,その他各種資料により作成。

 当面TMX-67を追撃するような製品が上市される恐れは極めて小さい。



5.TMX-67に見る開発戦略

 TMX-67は治療薬が極めて少ない痛風・高尿酸血症領域への30数年ぶりの改良新薬で,先行するザイロリックに対する優位性が明確な薬剤である。 生活習慣病へのチャレンジという点でも注目される。 帝人ファーマの開発領域選択の確かさには頭が下がる思いである。

 動物性蛋白の摂取が多い,したがって痛風・高尿酸血症患者が多い米国において,TMX-67を導入・共同開発しているTAPの導入品目選択の適切さも見事である。 日本発新薬の一つとして所期の成果を挙げられんことを期待したい。





筆者より

 年の瀬も押し詰まってまいりましたが,皆様お元気にご活躍のことと存じます。

 混合診療の問題に一応の決着がつきました。 私はどちらかといえば,規制緩和に賛成なのですが,今回の決着についてはなんとも不明な点が多いように感じております。
 といいますのも,日本の医療制度はどうあったらよいのか? 医療保険はどうあったらよいのか? これらについての理想的でなく,実際的な展望が得られていないところに原因があるように思います。 その展望の中で保険で保障する範囲とそうでない範囲,そしてそれらの混合した場合の取扱い・・・・・・このような体系的なデッサンが示されることを期待しておりましたが,いくつかの些末な問題に対する取扱いを決めるというかたちで決着をみたように思われます。

 スイッチOTCならぬスイッチ健康食品というのがあるそうです。
 『日経バイオビジネス』 2005年1月号,85〜89ページの特集のタイトルです。 あるいは,同誌の造語かも知れません。 いわゆる「食薬区分リスト」の「医」に分類されている成分を「食」に変更する,またはいずれにも掲載されていない成分を「食」として認可をとるということだそうです。 いってみれば,医薬品から部外品を跳び越えていきなり健康食品として認可を取ることになります。

 2001年にはコエンザイムQ10(エネルギー生産を訴求)が,2002年にはL-カルニチン(脂肪燃焼を訴求)が,2004年にはαリポ酸(チオクト酸)(美容効果を訴求)がそれぞれ認可されているそうです。 そういえば,ドラッグストアや薬店の店頭にこれらを含む多品種の商品を見かけます。 次の候補としては,グルタチオン,γオリザノール,タウリン,消化酵素などが挙がっているそうです。
 これらの成分の特徴は,加齢やライフステージによって不足する体内成分を補う,作用機序がよく知られている,安全性が高い(副作用があっても軽微)といった共通点があることだといわれています。

 つい最近,健康食品市場の伸びに陰りがみえたと聞きます。 しかし,これらの新しい動向が再び市場活性化につながっていくような感じが私には読取れます。 セルフメディケーションとセルフケアの境界は難しいのかもしれません。 本来,セルフメディケーションが包み込んでもよい領域がどんどんセルフケアの領域へ逃げてゆく・・・・・私はそんな感じをもっています。

 今月のメモは第2世代尿酸産生抑制剤TMX-67について書いてみました。 帝人ファーマの創薬ターゲット選定の確かさと,TAPの導入品選抜の的確さが光っていると思いました。 日本発の新薬が所期の成果を挙げるように期待しています。

                

(2004.12.21.YPC)



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【編集人】 小菅 博之 hkosuge@fukumi.co.jp
【著 者】 吉川 徹 E-mail:yoshkawa@ra2.so-net.ne.jp
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