医薬品評価誌The Medical Letterメルマガ#1438
[ムンプスのアウトブレイク/オピオイドの過量投与に対するナロキソンのスプレー式点鼻薬/痛風治療薬]

 このメールマガジンは医薬品評価誌「The Medical Letter日本語版」発行の都度、
その記事ダイジェストをお届けするものです。

 「The Medical Letter日本語版」は、原則的にFDA承認新薬[新規成分]の全部を評価しますが、
その領域の主要薬剤の位置づけと評価、更に市場・最新動向をレポート。





第1438号のトピック![2014.04.17]

ムンプスのアウトブレイク

オピオイドの過量投与に対するナロキソンのスプレー式点鼻薬

痛風治療薬





ムンプスのアウトブレイク

Mumps Outbreak

 ニューヨークのフォーダム大学の学生にムンプス(おたふく風邪)が大流行している。 発症した学生はいずれもムンプスワクチンを接種していた。

最近のアウトブレイク − 米国でムンプスが大流行しているのは、主に麻疹・おたふく風邪・風疹3種混合(measles-mumps-rubella:MMR)ワクチンを接種後10年以上経過した10代後半〜若年成人である。 主な原因としては、ワクチンそのものの効果不全、大学寮などでの密接した生活環境、免疫能の減衰があげられている。 彼らよりも高い年齢層で発生率が相対的に低いのは、曝露レベルが低いか、あるいは自然感染での免疫原性が高いためかもしれない。 2009〜10年にニューヨークで発生した大流行では、ほとんどの症例が過去にMMRワクチンを2回接種した人で、3回目のワクチン接種による曝露後予防によりその後の発症率は急速に低下した1,2。

勧告 − Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)は、大流行の期間中に曝露の可能性がある人、ワクチン接種歴がない人、他に免疫の根拠がない人すべてにワクチン接種を推奨している3。 曝露リスクのある学童および学生は、MMRワクチンの接種を少なくとも28日の間隔をあけて2回行うべきである。

 CDCは、ワクチン接種レベルが高い集団においても、曝露が集中的で、発症率が高く、伝播が2週間以上続く場合には、大流行を制御するため3回目のMMRワクチンの接種を考慮するよう勧告している4。

 MMRワクチンは、妊婦、重度の免疫不全患者、ネオマイシンを含むワクチン成分に対する重症アレルギー反応の既往のある患者には禁忌である。
1. IU Ogbuanu et al. Impact of a third dose of measles-mumps-rubella vaccine on a mumps outbreak. Pediatrics 2012; 130:e1567.
2. AP Fiebelkorn et al. Mumps postexposure prophylaxis with a third dose of measles-mumps-rubella vaccine, Orange County, New York, USA. Emerg Infect Dis 2013; 19:1411.
3. HQ McLean et al. Prevention of measles, rubella, congenital rubella syndrome, and mumps, 2013: summary recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). MMWR Recomm Rep 2013; 62(RR-04):1.
4. AP Fiebelkorn et al, in Manual for the surveillance of vaccine-preventable diseases. 5th edition, CDC, 2012, chapter 9. Available at: www.cdc.gov/vaccines/pubs/surv-manual/chpt09-mumps.html. Accessed March 10, 2014.

【日本語版コメント1438〜ムンプスのアウトブレイク/2014.0317】
 流行性耳下腺炎(Mumps、ムンプス、おたふくかぜ) は2〜3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側の唾液腺の腫脹を特徴とするウイルス感染症 であり、通常1〜2 週間で軽快する。最も多い合併症は髄膜炎であり、その他髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを認める場合がある。
 我が国でも毎年地域的な流行がみられており、1989 年の流行までは3〜4年周期で増減が見られていたが、同年のMMRワクチンの導入により、1991年にはサーベイランスが始まって以来の低い流行状況となった。その後緩やかに患者報告数が増加し、1993年にMMRワク チンが中止されたこともあって、1994年以降再び3〜4 年周期での患者増加が見られるようになっている。感染症法施行以降の1999年4月〜2000年12月の感染症発生動向調査から見ると、全国約3,000の定点医療機関から、毎週1,100〜4,800人程度の報告があった。2000年末より、最近10年間の当該週に比べて定点当たり報告数がかなり多い状態が続き、2001年の全国の定点からの患者報告総数は254,711人となり、過去10年間で最多であった。しかし、2002 年には182,635人(暫定データ)となり、減少がみられた。
 報告患者の年齢は4歳以下の占める割合が45 〜47%であり、0歳は少なく、年齢とともに増加し、4歳が最も多い。続いて5歳、3歳の順に多く、3〜6歳で約60%を占めている。
 有効な治療法がなく、MMRワクチンの予防接種が推奨される。

 →詳細は参考資料●MLリソース:ワクチンに纏めた。




オピオイドの過量投与に対するナロキソンのスプレー式点鼻薬

Intranasal Naloxone for Treatment of Opioid Overdose

 米国では最近ヘロインの過剰摂取による死亡が増加しているため、オピオイド拮抗薬のナロキソンが再び注目されている。 特に、パラメディックがナロキソンをスプレー式点鼻薬として使用できるようになり、またおそらくはヘロイン使用者の近親者や親しい友人が使用することも可能なことに、関心が集まっている。 静注(IV)投与が望ましいが、IV薬物乱用者は末梢静脈ラインの確保が難しい場合があり、彼らの血液に曝露することも有害な可能性がある。

【日本語版コメント1438〜オピオイドの過量投与に対するナロキソンのスプレー式点鼻薬/2014.03.17】
 日本では疼痛コントロールにNSAIDsを多く用いるが、米国では癌以外の疾患でオピオイドを使って長期の疼痛コントロールをすることが一般的である。 また抜歯後の疼痛にオピオイドが出されることも稀ではない。 そのため、患者の自己判断により誤ってオピオイドを過量に服用してしまい呼吸抑制などの致命的な副作用が出てしまうことがあり、また、ヘロインなどの違法薬物の摂取によって起こることもある。 オピオイドの過剰摂取による死亡事故率が多発(米CDCによると2011年の薬物による過量摂取による死亡22,810人中オピオイドは16,917人(74%))。 当初は救急者に搬送されてきた患者に病院の医師がナロキソンを注射していたが、搬送中の死亡が多かったため、現在では多くの州で医師と薬剤師の協定(CPA)が締結され薬剤師がナロキソンを処方可能になり、またいくつかの州ではナロキソンの経鼻投与キット(静注用ナロキソンとアトマイザー)を無償配布し、死亡事故率が大幅に減少させている。

 →詳細は参考資料●MLリソース:痛みに纏めた。



 日本語版註)ナロキソンスプレー式点鼻薬 naloxone HCl nasal spray
 【別名】 【開発元】Endo Pharmaceuticals Inc  [DBR_ID]
 【化学名】17-Allyl-4,5α-epoxy-3,14-dihydroxymorphinan-6-one hydrochloride
 【承認】FDA承認=13-Apr-1971;
 【製剤】Single-dose Ampul/vial 1ml中Naloxone Hydrochloride 0.4 mg 【適応】1)オピオイドによる抑制に対する拮抗 2)オピオイドの過量摂取の診断 Naloxone Hydrochloride Injection is indicated for the complete or partial reversal of opioid depression, including respiratory depression, induced by natural and synthetic opioids including propoxyphene, methadone, and certain mixed agonist-antagonist analgesics: nalbuphine, pentazocine, butorphanol and cyclazocine. Naloxone hydrochloride is also indicated for the diagnosis of suspected or known acute opioid overdosage. Naloxone may be useful as an adjunctive agent to increase blood pressure in the management of septic shock. 【用法用量】筋注・静注・皮下注。1)[オピオイドの過量摂取] 成人には0.4mg-2mg静注から開始。 望ましい反応と呼吸機能改善が得られなかった場合、2〜3分間隔で繰り返し投薬。 10mgを投薬後に反応が得られなかった場合は、オピオイドによる毒性の診断が問題となる。 小児には0.01mg/Kgから開始、望ましい効果が得られなかった場合0.1mg/Kgを投薬。 2)[術後のオピオイドによる抑制] 成人には、手術中のオピオイド使用に伴う抑制には、少量のナロキソンで通常十分である。 0.1mg-0.2mg静注を2〜3分毎に投薬し、望ましい効果が得られるまで投薬。 小児は0.005mg-0.01mg静注を2〜3分毎に投薬。 新生児には0.02mg/mLを使用、0.01mg/Kgから開始。
 【作用】ナロキソン塩酸塩は、オピエートレセプターにおいて麻薬性鎮痛剤の作用を競合的に拮抗することにより、これらの薬剤に起因する呼吸抑制等の作用を改善すると言われている 【特徴】「ナロキソン」はオキシモルフォンのN−アリル体として合成された麻薬拮抗剤であるが、その薬理作用面から“レバロルファン”や“ナロルフィン”と異なり、麻薬様アゴニスト作用を有さないほぼ純粋な麻薬拮抗剤である。 
 【製品情報】Naloxone Hydrochloride Injection, USP[Hospra] 【添付文書】Naloxone Hydrochloride Injection, USP -PI[Hospra]
 【提携】 【EU】主な外国での発売状況 Narcan〔米、英、仏、伊〕Narcanti〔独〕 
 【日本】ナロキソン塩酸塩静注0.2mg「第一三共」[製造販売元/第一三共株式会社 販売元/アルフレッサファーマ株式会社]発売1985年1月28日 【製剤〜日本】1アンプル中ナロキソン塩酸塩(日局) 0.2mg/1mL 【適応〜日本】麻薬による呼吸抑制ならびに覚醒遅延の改善  【用法用量〜日本】ナロキソン塩酸塩として、通常成人1回0.2mgを静脈内注射する。 効果不十分の場合、さらに2〜3分間隔で0.2mgを1〜2回追加投与する。なお、患者の状態に応じて適宜増減する。 【製品情報〜日本】ナロキソン塩酸塩静注0.2mg「第一三共」  【添付文書〜日本】ナロキソン塩酸塩静注0.2mg「第一三共」 - インタビューフォーム 【その他】
 【開発の経緯】
第一三共(株)(当時三共(株))においては、厚生労働省(旧 厚生省)の「麻薬中毒に関する厚生科学研究」の一環として1961年より麻薬拮抗剤に関する研究を開始し、1963年第一三共(株)独自の製法に基づく「ナロキソン塩酸塩」の合成に成功した。
その後、更に本剤の合成改善を行うと共に、基礎的検討を経て、1981年より臨床試験を開始し、麻酔時の『麻薬による呼吸抑制ならびに覚醒遅延の改善』を目的とする臨床試験が12施設において実施され、ナロキソンの高い有効性と安全性が確認された。
本剤は、1984年10月に製造販売承認を得て、1985年1月に発売した。
なお、医療事故防止対策に基づき、2009年9月に販売名を塩酸ナロキソン注射液「三共」からナロキソン塩酸塩静注0.2mg「第一三共」に変更した。




痛風治療薬

Drugs for Gout

 痛風治療の目標は、急性炎症の治療、再燃の予防、血清尿酸値の低下の3つである1,2。

【日本語版コメント1438〜痛風治療薬/2014.03.17】
痛風は、過飽和の高尿酸体液より析出した尿酸一ナトリウムの結晶が関節および腱の内部やまわりに沈着することにより起こる末梢関節の再発性の急性または慢性関節炎。 痛風はわが国に於いて1960年以降著しい増加を認めた疾患であり、現在の本邦における痛風患者数は30〜60万人と推定されるが、「患者調査」による痛風患者数は11.3万人(2011年)。 痛風の基礎的病態ともいえる高尿酸血症もまたわが国で増加傾向を認めており、成人男性の約20%が高尿酸血症で現在数百万人の高尿酸血症者がいると推定される。(非関節炎性・非痛風性の高尿酸血症患者数は年12.1万人)

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版」(2012年追補販)によれば、コルヒチン、NSAIDS、ステロイド薬の3種選択でき、痛風発作の前兆期にはコルヒチン1錠、極期にはNSAIDS短期大量療法が一般的。 痛風関節炎を繰り返す症例や痛風結節を認める症例は尿酸降下薬の適応となる。尿酸降下薬は尿酸排泄促進薬3種(プロベネシド、ブコローム、ベンズブロマロン)と尿酸生成抑制薬2種(アロプリノール、フェブキソスタット)がある。 経済的にはアロプリノールが市場の70%を占める。
 国産の新薬フェブキソスタット(フェブリク®錠)は帝人ファーマが創製した新規の痛風・高尿酸血症治療剤で痛風の原因となる尿酸生成合成酵素キサンチンオキシダーゼの阻害剤。日本では2011年5月17日発売、欧州承認2008.4.21、米国発売2009.3.13(欧米商品名Uloric/ユーロリック) 2013年度世界売上383億円(帝人国内114億円、武田海外269億円)
 同じ非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害剤トピロキソスタット(ウリアデック錠[三和化学研究所])は富士薬品が創製し三和化研と共同開発したもので、発売2013年9月4日。

 →詳細は参考資料●MLリソース:高尿酸血症治療剤に纏めた。





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●参考資料
医薬調査資料(追加メモ)の頁製薬各社製品売上(世界)製薬各社製品売上(国内)「FDA承認新薬一覧」
ML資料:FDA諮問委員会〜議題




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