MLリソース:セリアック病(Celiac Disease)



セリアック病/Celiac Disease,Coeliac Disease
セリアックスプルー/celiac sprue
小児脂肪便症/Pediatric Intestinal malabsorption
グルテン不耐症/Gluten Intolerance
グルテン性腸症/gluten sensitive enteropathy (GSE)






【日本語版コメント1281】
セリアック病は、非熱帯スプルー、グルテン性腸症、またはセリアックスプルーとも呼ばれ、小麦や大麦、オーツ(カラス麦)に含まれるタンパク質のグルテンに対する遺伝性の不耐症であり、小腸内膜に特徴的な変化を起こし、吸収不良を起こす。放置しておくと腸癌などの重い合併症につながる。
 人種によって頻度が異なり、セリアック病は白人に多く、有色人種(黒人、黄色人種)で少ないとされていたが、成人は複合疾患が多く正確な鑑別診断がなされていないケースが多い。
日本で初めて本格的なセリアック病の疫学調査を実施したのは、信州大学2内中澤英之、牧島秀樹、石田文宏(准教授)ら(日本セリアック病研究会)で、欧米の罹患率が約1%であるのに対し、日本は0.7%(87.5万人)であると発表した。またスクリーニング方法として血清中抗トランスグルタミナーゼIgA抗体(TTGIgA)測定が有用であることを実証した。
FAO/WHOコーデックス委員会では「グルテン不耐症患者のための特殊用途食品の規格」の改訂がステップ8(次回第31回総会(2008年6月))に提出予定。 日本も参加しているのでグルテンフリー食品の規準が作成される見込み。 米国では既にグルテンフリー食品は広範囲に普及している。
米国で現在3つの新薬が開発中。 AT-1001(Larazotide Acetate)[Alba Therapeutics] P2b | CCX282-B(Traficet-EN(TM);CCR9) [ChemoCentryx] 米P2完了 | ALV 003 [Alvine Pharmaceuticals Inc] P1
 →詳細は参考資料●MLリソース:セリアック病(Celiac Disease)に纏めた。
<日本語版コメント要約>
・セリアック病は、遺伝的グルテン不耐により引き起こされる慢性自己免疫疾患である。
・医薬品や食品、化粧品に含まれるグルテンは、セリアック病患者にとって問題となる可能性がある。
・医薬品に含まれるグルテンの大部分は不活性成分だが、不活性成分の原料はラベルを変更せずに変更することができるため、医薬品のラベル表示は役に立たない場合がある。
・製品にグルテンが含まれるかどうかは、メーカーに問い合わせることが望ましい。



【市場】

【開発中の新薬】「治験」ホームページ[厚生労働省]
  - 開発中の新薬[<情報提供:日本製薬工業協会>]
  会社別開発中新薬一覧。 検索機能なし。68社から情報提供
該当なし

●New Medicines in Development[PhRMA 米製薬協]	/2008.5.10
[MemberArea]New Medicines in Development[PhRMA 米製薬協]
Registered NameCompanyIndicationStatus備考
AT-1001(Larazotide Acetate)Alba Therapeutics/University of Maryland School of Medicine (Originator)Coeliac Disease米P2bShireに米・日外(2007.12.14)
AT-1001 is an inhibitor of barrier dysfunction that has been shown to block intestinal permeability and the genesis of some autoimmune diseases, either as a result of reduction of antigen presentation to the body's immune system, or through some unknown inhibitory, direct effect on gastrointestinal associated lymphoid tissue. AT-1001 is orally formulated, has been granted "Fast Track" designation by the U.S. Food and Drug Administration for the treatment of Celiac Disease, and is also being evaluated for the treatment of Type 1 Diabetes and Crohn's Disease.
ALV 003Alvine Pharmaceuticals Inc/Stanford University(Originator)Coeliac Disease米P1
ALV003 is an orally administered combination of two proteases engineered to digest gluten. It targets the glutamine and proline residues that are common in gluten. ALV003 consists of a glutamine-specific cysteine protease (EP-B2) and a proline-specific prolyl endopeptidase (PEP). The proposed mechanism of action of ALV003 is to digest gluten into non-immunotoxic fragments.
CCX282-B(Traficet-EN(TM);CCR9)ChemoCentryxCeliac Disease米P2完了GSKと契約
★クローン病がP2/3で先行。 潰瘍性大腸炎P1
Traficet-EN is intended to control the inappropriate immune system response underlying Crohn's disease by inhibiting the CCR9 chemokine receptor. In adults, CCR9 is a highly specific receptor expressed predominately by T-cells, a subset of the body's immune cells that migrate selectively to the digestive tract. Studies have shown that when CCR9, or its chemokine ligand CCL25 (previously known as TECK), are over-expressed, the migration of T-cells to the small and large intestine causes persistent inflammation. CCR9 positive T-cells have been shown to play a role in Crohn's disease and other gastrointestinal tract inflammatory disorders such as ulcerative colitis and celiac disease.
α-MSH(alpha-melanocyte-stimulating hormone-related peptides)Migami, Inc.Celiac Disease
Migami, Incは2008.1.7にZenGen, Inc資産を買収しα-MSHの権利も獲得。これには化粧品とOTCへの使用も含む。;
ClinicalTrials.gov - Celiac Disease(22件) 【解説資料】メルクマニュアル第17版日本語版 - セリアック病 セリアック病 - Wikipedia [NIDDK]Celiac Disease 【データ】 ●患者調査
疾病分類名  (単位:千人)1999年度2002年度2005年度
●消化器系のその他の疾患(K90−K93)(15)(18)
K90  腸性吸収不良(症)(-)(0)
 K900  小児脂肪便症--
 K901  熱帯性スプルー--
 K902  盲係蹄<ブラインドループ>症候群,他に分類されないもの0-
 K903  膵性脂肪便症--
 K904  不耐性による吸収不良(症),他に分類されないもの00
 K908  その他の腸性吸収不良(症)--
 K909  腸性吸収不良(症),詳細不明00
MS9-11 本邦におけるセリアック病の頻度に関する検討(食物アレルギー2,ミニシンポジウム9,一般演題,第56回日本アレルギー学会秋季学術大会) 中澤 英之 1 牧島 秀樹 2 石田 文宏 3 1信州大学 医学部 内科第二 血液内科 2信州大学 医学部 内科第二 血液内科 3信州大学 医学部 内科第二 血液内科 アレルギー(Japanese Journal of Allergology) 55(8-9)1116,Sep 2006 背景:セリアック病(Celiac disease;CD)は,麦類に対する腸管アレル ギー疾患である.主な症状は下痢であるが,鉄欠乏性貧血,骨粗鬆 症,糖尿病などが合併し,悪性リンパ腫などの悪性疾患のリスクを高め るとされている.欧米では罹患率が約1%であるが,本邦では症例報 告が見られるのみである. 目的:本邦におけるCDの罹思率を検討するために,当科患者におい てスクリーニング検査を行った- 対象:内科疾患患者719例.健常者コントロール95例.方法:血清中 抗トランスグルタミナーゼIgA抗体(TTGIgA)を測定し,陽性患者を 十二指腸または小腸生検により病理学的に検討した. 結果;TTGIgA陽性は20例(2%)で,そのうち典型的な消化器症状 を来たした臨床的CDは5例(全体の0.7%)であった-男性5例,女 性0例,平均年齢53.8才で,1例が生存中で平均生存期間は52 ヶ月であった,そのうち2例は内視鏡的にCDと確認された.TTGIgA 陰性例にはCD症例はなかった.CD患者中悪性リンパ腫が2例認 められた.健常者コントロールにはTTGIgA陽性例はなかった. 結語:TTGIgAはわが国でもCDのスクリーニングに有用であった.グ ルテン過敏症に対する感度は100%,特異度は97%であった-内科 受診患者の中にCD患者が存在した. 【臨床ガイドライン】 Celiac disease. National Institutes of Health (NIH) Consensus Development Panel on Celiac Disease - Office of Medical Applications of Research (NIH). 2004 Aug 9. 15 pages. NGC:003830 Guideline for the diagnosis and treatment of celiac disease in children: recommendations of
the North American Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition
. North American Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology, and Nutrition. 2005 Jan. 19 pages. NGC:004186 - [紹介]セリアック病の子供に対する診断と治療に関するガイドライン:北米小児胃腸・肝臓・栄養学会からの勧告 AGA Institute medical position statement on the diagnosis and management of celiac disease. American Gastroenterological Association Institute. 2006 Dec. 4 pages. NGC:005429 WGO-OMGE practice guideline: celiac disease. World Gastroenterology Organisation. 2005 Feb. 18 pages. NGC:005089 [AHRQ]Evidence Report/Technology Assessment No.104: Celiac Disease(pdf,906p,Sep 2004) - 紹介記事 A systematic review of the evidence regarding screening patients for celiac disease, a small-bowel malabsorption disorder that results in mucosal inflammation, villous atrophy, and crypt hyperplasia, which occur on exposure to gluten, and clinical and histologic improvement when gluten is withdrawn from the diet. 【総説記事・文献】 ■行政府の対応 ●農林水産省[コーデックス委員会]栄養・特殊用途食品部会(CCNFSDU) 「グルテン不耐症患者のための特殊用途食品の規格」の改訂がステップ8(次回第31回 総会(2008年6月)に提出)。 (注:第29回部会(2007年11月)において、規格名が「グルテンフリー食品の規格」か ら変更された。) コーデックス委員会は、消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保等を目的として 、1962年にFAO及びWHOにより設置された国際的な政府間機関であり、国際食品規格の作 成等を行っています。我が国は1966年より参加しています。 ●厚生労働省FAO/WHO合同食品規格計画コーデックス・バイオテクノロジー応用食品特別部会アレルギー物質を含む加工食品の表示ハンドブックについて[2005.11.22 - p17;小麦グルテン アレルギー物質を含む食品に関する表示について[食監発第46号] 平成13年3月21日 (最終改正 平成16年12月27日付食安基発第1227001号、食安監発第1227004号) [I−6 諸外国での規制の状況はどのようになっているのでしょうか。]  平成11年6月に、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)総会 において、アレルギー物質として知られる以下の8種の原材料を含む食品にあっては、 それを含む旨を表示することで合意され、現在、加盟国で各国の制度に適した表示方法 が検討されています。   (1)  グルテンを含む穀類及びその製品   (2)  甲殻類及びその製品   (3)  卵及び卵製品   (4)  魚及び魚製品   (5)  ピーナッツ、大豆及びその製品   (6)  乳・乳製品(ラクト−スを含むもの)   (7)  木の実及びその製品   (8)  亜硫酸塩を10mg/kg以上含む食品 ●WHO [WHO-EMRO]Library: Celiac Disease [SU]〜文献集 ●FAO/WHO Codex Evaluation of Allergenicity of Genetically Modified Foods 遺伝子組換え食品アレルギー誘発性評価(仮訳) バイオテクノロジー応用食品のアレルギー誘発性に関するFAO/WHO専門家会議報告書 2001年1月22日〜25日 [4. 食物アレルギーの概要] (略) グルテン過敏性腸症またはセリアック病は、もともと遺伝的にその素因をもっている患者がグルテン(グリアジン)に反応して引き起こされるT細胞性免疫反応である。この疾患で顕著なのは小腸の炎症で、罹患すると吸収不良を起こし体力消耗・貧血・下痢・骨痛その他の症状が現れる。患者は、一生を通じて小麦・ライ麦・大麦などの穀物に含まれるグルテンの摂取を避けなくてはならない。
 セリアック病やその他の腸症は重要な疾患であると認められたが、この会議で討議された食品安全性評価プランに加えられることはなかった。
United States Department of Agriculture [USDA] - 米国農務省

●米FDA
Food Labeling; Gluten-Free Labeling of Foods[2007.1.23 官報]
〜[翻訳]グルテンフリー表示に関する規則(案)[36p;p29以降]
FDA による「グルテンフリー」の定義は、セリアック病(グルテン感受性腸炎gluten-sensitive enteropathy)患者や
その家族が安全な食品を見分ける際の助けとなる。
米国における推定患者数は?専門家の推定によれば、この病気の患者は米国人の1%である。




■一般文献
Coeliac disease in Sudanese children with clinical features suggestive of the disease
WHO EMRO - Eastern Mediterranean Health Journal 12(5)582-589,Sep 2006;全文公開
〜80例の解析
Coeliac disease: a potentially treatable health problem of Saharawi refugee children
Bulletin of the World Health Organization, 2001, 79(6)541-545
セリアック病の診断における血清学的検査およびHLA-DQタイピングの精度
ACP Annals of Internal Medicine 147(5)1-34,4 Sep 2007
セリアック病の脂質状態変化:無グルテン食の有益性
Change in Lipid Profile in Celiac Disease: Beneficial Effect of Gluten-Free Diet
Pardeep brar, MD, et al. (Department of Medicine and Pediatrics, Columbia
University College of Physicians and Surgeons)
Am J Med 2006;119:786-790
今回無グルテン食の効果を、セリアック病患者700人の脂質状
態を追跡することにより評価した。
【考察】セリアック病は低TC・HDL コレステロール血症が特徴的であり、無グルテン食はTCを
上昇させるが、実質的にはHDL コレステロールの上昇であった。男性においてはLDL コレス
テロールの上昇を認めるも、LDL/HDL 比は両性において明らかに減少していた。これは脂質
動態を改善し、心血管系リスクを減少させることを示している。




【ニュース・トピックス】
欧州のセリアック病患者は250万人と推定、決して少なくない[日経メディカル2007.11.1]
BioToday - Alba社 セリアック病を対象にしたAT-1001の第2相試験を開始
米Zengen、セリアック病に伴う炎症反応の抑制にα-MSH製剤が有望[日経BPnet,2003.2.21]
セリアック病及び熱帯性スプルーの治療のための抗MAdCAMの使用
 - 
コープスイスがアレルギー対策の新商品群を開発、4月から発売[2006.5.8]
Gluten Free Food グルテンフリー食品
General Mills cereal goes gluten-free[2008.4.21]
  - 国際的大手食品会社ジェネラル・ミルズ社がグルテン・フリー製品市場に参入。
  同社US Rice Chex cereal をグルテン・フリーに変更(従来は大麦麦芽シロップbarley malt syrup使用)。
アナリストMintel氏によると、2000年以降 グルテン・フリー食品は年間300%の成長率。
FDAは2008年内に規準作成予定。
米国農務省USDAによると、gluten-free 市場規模は2010年迄にEuro1.25bn ($1.7bn)。
セリアック病は133人に1人。 欧州に多く、英国は米・伊に次いで3番目の多く、gluten-free 市場規模は
£47m (Euro 70m)
小児胃腸科専門家が児童のセリアック病検診を提唱[2008.4.10]
 - カナダローカルニュース; 「より多くの児童に小児脂肪便症(セリアック病)の検診
を受けさせるべきです」と訴えたのは、バンクーバーのBC 州児童病院の小児科胃腸科医
、コリン・ベーカー医師だ。セリアック病を治療せずに放置しておくと、腸癌などの重い
合併症につながると、同医師は警告している。



【リンク・リソース】
MedlinePlus: Celiac Disease-




【主要サイト】
日本セリアック病研究会
 - 日本におけるセリアック病の現状のおしらせ
Celiac Disease Foundation
Celiac Disease and Gluten-free Diet Information Since 1995
National Foundation for Celiac Awareness
Celiac Sprue Association (CSA)
 - 診断、治療法、
Canadian Celiac Association 
[NIH]Celiac Disease Awareness Campaign 
Celiac Disease - Gluten Intolerance Group of North America
American Celiac Disease Alliance (ACDA)






●解説


■セリアック病/Celiac Disease
●概要

(非熱帯性スプルー;グルテン腸症;セリアックスプルー)

グルテンの不耐により引き起こされる慢性腸吸収不良疾患。 

●病名
セリアック病/Celiac Disease,Coeliac Disease
セリアックスプルー/celiac sprue
小児脂肪便症/Pediatric Intestinal malabsorption
グルテン不耐症/Gluten Intolerance
グルテン性腸症/gluten sensitive enteropathy (GSE)
※当初小児疾患と思われていたが、現在は年齢を問わないことが判明。


●分類



●疫学

セリアック病の有病率は,南西諸島での約1:300から,北米での1:5000以上である。単一の遺伝的マーカーはない。[Merck Manual]

アムステルダム自由大学メディカルセンター教授のChris Mulder氏は「最近の推計値では、欧州には約250万人のセリアック病患者がいる。」「欧州と米国で集団検診を受けた人のデータから、住民の150人に1人の割合でセリアック病患者がいるとする信頼できるデータが報告された」 数年前までは、セリアック病や食品不耐症は主として小児の疾患と考えられていた。乳児の低体重や成長障害から診断が付く場合が多かったためである。しかし、最近ではセリアック病は、アレルギーと自己免疫疾患の組み合わさったものと考えられており、成人になってから発症する場合があることが分かった。「現在ではセリアック病の新規発症例の60%が成人であり、60歳を超えてから発症する例も15〜20%ある」 from UEGWプレスカンファレンス 2007.10.31記事

日本で初めて本格的なセリアック病の疫学調査を実施したのは、信州大学2内中澤英之、牧島秀樹、石田文宏(准教授)らで、欧米の罹患率が約1%であるのに対し、日本は0.7%であると発表した。またスクリーニング方法として血清中抗トランスグルタミナーゼIgA抗体(TTGIgA)測定が有用であることを実証した。 from MS9-11 本邦におけるセリアック病の頻度に関する検討(食物アレルギー2,ミニシンポジウム9,一般演題,第56回日本アレルギー学会秋季学術大会) アレルギー 55(8-9)1116,Sep 2006




●症状

セリアック病は無症状のことがある。多くの患者では,軽症から重症(7〜50g〔20〜150mEq〕脂肪酸/日)の脂肪便がみられる。セリアック病は,低身長,不妊,再発性アフタ性口内炎または疱疹状皮膚炎,時には下痢症状を伴わないこともある。単一の典型的な発症はない。欠乏状態に続いて二次的に多くの症状(例,貧血,体重減少,骨痛,知覚異常,浮腫,皮膚疾患)が現れる。もし明白な消化器症状(例,下痢,腹部不快感,腹部膨満)も生じた場合には,診断を誤ることはまずない。これらの直接的な手がかりがなければ,セリアック病は疑われない。

 小児では,グルテンを含む食物を摂らない限り症状はない。患児は成長がよくない;白っぽく悪臭のあるかさ高い便を出すようになる;痛みを伴う腹部膨満を来す。鉄欠乏性貧血が進み,もしも低蛋白血症が十分ひどければ,浮腫が現れる。セリアック病は,十分な食事を摂っている(このことから蛋白,カロリー栄養失調やクワシオルコルを除外する)のに顔色が悪くて不機嫌で,るいそうのある殿部・太鼓腹をした小児に強く疑われる。

 女性での発症は,男性よりも10〜15年早いが,これは無月経や妊娠時の貧血が臨床上の疑いを高めるためである。家族内の発生は価値ある手がかりとなる。また,患者は小児期の病気について思い出さないことがあるが,胃腸病のために身長が他の兄弟たちに比べて著しく小さかったり,軽い長骨の弓状変形を引き起こすことがある。部分的胃切除術の後,疾患が明らかになることがある。

 鉄欠乏性貧血は小児にみられ,葉酸欠乏性貧血は成人にみられる傾向がある。重症度や持続期間によって,低アルブミン血症や低Ca,K,Na血症,アルカリホスファターゼ上昇(骨が関与することで起こる),プロトロンビン時間の延長のうちのどの組み合わせもみられる。

●原因

この遺伝性疾患は,小麦やライ麦に含まれ,大麦やオート麦には少ない穀物蛋白グルテンの成分であるグリアジンに感受性があるために引き起こされる。グリアジンは,抗原として働き,腸粘膜内で免疫複合体を形成してキラーリンパ球の集合を促進する。これらのリンパ球は,絨毛の喪失や腸陰窩細胞の増殖を伴う粘膜傷害を引き起こす。
Gliadin - Wikipedia, the free encyclopedia
[ウィキペディア]グルテン



●診断

診断はまず症状と徴候に基づいて疑われ,検査所見やX線所見でさらに可能性を高められ,平坦粘膜を示す生検や,臨床的・組織学的にグルテン除去食の結果として改善がみられることで確定される。空腸生検は小さな幼児に対しても行えるが,腸穿孔の危険を避けるために,経験を積んだ検者のみがこれを行うべきである。生検を行えない場合には,診断はグルテン除去食に対する臨床上・検査上の反応(D-キシロース吸収を含む)に基づいている。筋内膜抗体(EMA)価が,高い感度と特異度を示すので,セリアック病のスクリーニング検査として推奨されている。典型的な粘膜異常は,疾患をもつ患者から生まれた見かけ上健康な兄弟にみられることがある。

 5g D-キシロース検査は通常,異常を示す。治療していない患者は低いC3とC4を示し,それはグルテンを除去することで上がり,高い血清IgA価を示す;33%〜50%では,IgMは減少している。

●検査

免疫学的には、特徴的な抗体が認められます。具体的には、抗トランスグルタミナーゼ抗体、抗エンドミシアル抗体、抗グリアジン抗体が知られている。また、副腎皮質ホルモンによる免疫抑制療法が症状改善に有効である場合がある。最近の報告では、これらの抗体がセリアック病のスクリーニング検査に有用であり、抗体陽性者は十二指腸生検により精査・診断することが勧められている。

海外では、セリアック病患者は、HLA-DQ2という、日本人にはほとんど無い遺伝子型を持っている。

グルタミナーゼテスト[グレートプレインズ研究所] $99
抗レティクリン抗体[SEL]
The Anti-Gliadin Antibody Assay...Dramatic Relief for millions suffering from Digestive Disorders,
Psychological Disorders, Behavioral Disorders and Celiac Disease.
- Immuno Laboratories, Inc


●治療

グルテンは食事の中から除去しなければならない。少しでも摂取すれば症状寛解が妨げられるか再発を引き起こす。グルテンは非常に広範に用いられているので(例,市販のスープ,ソース,アイスクリーム,ホットドッグ),患者は避けるべき食料品の詳しいリストとセリアック病に詳しい栄養士からの専門的アドバイスを必要とする。

 ビタミン,ミネラル,造血剤補給を,欠乏の程度に応じて与える。軽症の場合には何も補給しなくてよいだろう。重症の例では広範囲の補給が必要だろう。成人に対しては,硫酸鉄300mg/日を経口で,葉酸5〜10mg/日を経口で,グルコン酸カルシウム5〜10g/日を経口で,標準的複合ビタミン製剤を投与する。プロトロンビン時間が異常な場合だけフィトナジオン(ビタミンK)10mgを筋注で与えるべきである。これに比例する量を小児には与える。ときに,初めに診断のついたときから重症の小児(まれに成人)には,一定期間経静脈栄養が必要であり,TPN(全非経口栄養)の一般的原則に沿って行われなければならない。

 少数の患者では,ほとんどまたは全くグルテン除去に対して反応がないが,これは診断が誤っているかまたは難治性だからである。後者の場合,コルチコステロイドの経口投与を行うことにより(例,プレドニゾン10〜20mgを1日2回)反応があることがある。

●薬物治療

副腎皮質ホルモンによる免疫抑制療法が症状改善に有効である場合がある。

米国で現在3つの新薬が開発中。 AT-1001(Larazotide Acetate)[Alba Therapeutics] P2b
CCX282-B(Traficet-EN(TM);CCR9) [ChemoCentryx] 米P2完了
ALV 003 [Alvine Pharmaceuticals Inc] P1 


●予防と自然経過

グルテン除去が小児の予後を変え,成人の実質的な予後の改善になるが,主に初めから重症の成人では,今だにこの疾患によって死亡する患者もいる。重要な死因はリンパ網内系疾患(特に腸管リンパ腫)である。グルテン除去食がリスクを減少させるかどうかはわかっていない。

 グルテンを長い間除去した後,食事中に再導入することに耐えうる患者もいる。このことは,ある軽症のものは完全に寛解しうること(あまりないが),またはグルテンの毒性は細菌性またはウイルス性腸炎によってあらかじめ侵された粘膜に非特異的な影響を及ぼすことを示している。いずれにせよ,見かけ上の臨床的な寛解は,しばしば再生検やEMA価上昇によってのみわかる組織学的な再発を伴う。

●参考資料

メルクマニュアル第17版日本語版 - セリアック病
セリアック病 - Wikipedia




■吸収不良症候群
●概要

小腸からの栄養吸収障害の結果起こる症候群。

●分類



●疫学



●症状

吸収不良の症状は,消化管の中の浸透圧的な作用物質の影響や,栄養欠乏を起こすことによって生じる。いくつかの吸収不良の原因は,はっきりした臨床上の徴候を示す。疱疹状皮膚炎はセリアック様腸症の軽いものに伴うことがしばしばある:胆汁性肝硬変や膵癌は黄疸を引き起こす;腸間膜虚血によって生じた腹部アンギーナ;慢性膵炎は腹部中央の疝痛を起こす;ゾリンジャー-エリソン症候群は重症で持続性の潰瘍型消化不良を生じる。

 吸収不良は,腸内容積の増加とガスの発生による不快感や,体重減少,舌炎,手根足けいれん,腱反射消失,皮膚挫傷,鼓腸,腹部膨満を生じる。ラクターゼ欠乏症の症状は,ミルクを飲んだ後の腹部膨満とガスを伴った激しい下痢である。膵臓リパーゼ欠乏症は消化されなかった食物脂肪(中性脂肪)の混ざったギラギラした便を示す。

 時に脂肪便が生じることがある――青白く軟らかでかさ高く悪臭を放つ便で,便器の内側に付着したり浮いたりして流しにくい。このような便はセリアック病や熱帯性スプルーで生じやすい。脂肪便は,比較的正常にみえる便でも起こることがある。

 二次的な栄養障害は,原疾患の重症度と消化管の病変の大きさに比例して起こる。吸収不良患者の多くは貧血があり,通常,鉄欠乏(小赤血球性貧血)と葉酸欠乏(巨赤芽血球性貧血)に原因がある。鉄欠乏は通常,セリアック病や胃切除後の患者に起こる。十分な食事にもかかわらず,葉酸吸収不良が起こる主因は,セリアック病か熱帯性スプルーである。B12欠乏症は,盲係蹄症候群において,また遠位回腸や胃の大幅な切除後何年も経って起こることがある。しかし,回盲部のクローン病に対する回腸末端の通常の50cm切除では,めったに顕著なB12欠乏にはならない。Ca欠乏症はよくみられ,1つには吸収障害によるビタミンD欠乏により,また一方では,Caが吸収されない脂肪酸に結合することによる。Ca欠乏症は骨の痛みとテタニーを引き起こす。小児性くる病はまれだが,大人の重症のセリアック病において骨軟化症が起こることがある。チアミン(ビタミンB1)欠乏症(B12欠乏症も同様)は知覚異常を引き起こし,ビタミンK吸収不良(主に脂溶性)は打ち身のあざ・出血傾向を伴う低プロトロンビン血症につながる。重症のリボフラビン(ビタミンB2)欠乏症は舌痛や口角炎を起こすが,ビタミンA,ビタミンC,ナイアシン欠乏症はめったに臨床上の問題を引き起こさない。

 蛋白質吸収不良は通常下肢に低蛋白血性浮腫を起こす。脱水,K喪失,筋力低下が大量の下痢に続いて起こりうる。二次的内分泌欠乏が栄養不良によって起こることがある;例えば,一次的または二次的な無月経は若い女性のセリアック病の重要な徴候である。

●原因

多くの疾患やそれによりもたらされる結果が,消化や吸収の障害による吸収不良を引き起こす。その機序は吸収の直接的な障害や,吸収障害を引き起こす消化の異常である。吸収不良は多くの栄養素や特殊な炭水化物,脂肪,微量栄養素に関して起こる。

表 吸収不良の原因
機序疾患
胃での混合が不十分胃腸吻合術
ビルロートII法胃切除術
胃結腸瘻
消化作用物質の不足慢性膵炎
嚢胞性線維症
慢性肝不全
胆道閉塞
ラクターゼ欠乏症
スクラーゼ・イソマルターゼ
欠損症
不適切な環境ゾリンジャー・エリソン症候群(十二指腸の低pH)
細菌過剰増殖-盲係蹄症候群(胆汁酸塩の脱抱合)
憩室
粘膜上皮の急性異常急性腸感染症
ネオマイシン
アルコール
粘膜上皮の慢性異常セリアック病
熱帯性スプルー
ホウィップル病
アミロイドーシス
虚血
クローン病
短腸クローン病に対する腸切除
腸捻転
腸重積
梗塞
輸送障害乳び管うっ滞-リンパ腫
リンパ管拡張症
アジソン病-?輸送酵素
?無βリポ蛋白血症


●診断

症状と徴候から,吸収不良の診断を導くことができる。体重減少,下痢,貧血のうちどの組み合わせにおいても,吸収不良を疑わなければならない。臨床検査で確定診断がつく。

 便中脂肪分の直接測定は,吸収不良を確定するのに最も信頼度の高い検査である。脂肪便は,吸収不良の明白な証拠となるものの,いつでもみられるわけではない。1日50〜150gの脂肪を含む通常の洋食を食べている成人では,17mEq/日以上の便中の脂肪があれば異常である。便採取の精密度が大切である。外来の救急患者の便中脂肪分の測定は,実行可能かつ益のあることである;3ないし4日の採取が通常適当である。

 便の視診と顕微鏡検査は価値がある。前述のような典型的な便の外観は見まちがえることはない。未消化の食物片の存在は,過度の腸管運動亢進または腸の短絡(例,胃結腸瘻)を示唆する。黄疸のみられる患者からの油でギラギラした便は,胆汁性肝硬変または膵癌を示す。顕微鏡検査で脂肪の小粒子や未消化の肉の繊維がみられれば膵機能不全を考える。鏡検では寄生虫卵と寄生虫の同定が可能である。スダンIII染色による便塗沫標本の染色は,定量的ではないが,比較的簡単で直接的な便脂肪のスクリーニング検査である。

 吸収試験は,病変を確認するのに効果的である(乳酸吸収不良については,後述の「炭水化物不耐症」参照)。D-キシロース吸収は,直接的ではないが,比較的特異的な近位小腸の吸収の測定法である。原発性の空腸疾患では異常な所見は通常だが,まれには他の原因の吸収不良においても異常となる。D-キシロース5gを絶食した患者に経口摂取させ,続く5時間の間尿を採取する。この用量ではより多い用量(25g)に比べやや感度が劣るが,嘔気や下痢は起こらない。尿量が十分でGFR(糸球体濾過率)が正常だと仮定すると,5時間に集めた尿内に1.2g未満のD-キシロースしか存在しなければ,異常だと考えられ,1.2〜1.4gであればボーダーラインであると考えられる。この検査は小児科においてよく行われるが,小さな子供の尿を完全に集めるのは難しく,血中濃度の測定を好む研究者もいる。しかしながら,D-キシロース用量が0.5g/kgでない限り,正常と異常域の重複がかなりあり,血中濃度の測定は信頼性がより低い。

 鉄の吸収不良は,食事が十分で慢性の血液喪失やサラセミアもみられないのに血清中のフェリチンや鉄が低い患者で疑われる。貯蔵鉄の減少は,骨髄検査でみられる。

 葉酸吸収異常はもし適切な食事をしていて過剰なアルコールを摂取していない患者で,血清や赤血球の葉酸塩レベルが低い場合には考えられる。

 ビタミンB12吸収異常は血清B12が低い場合に考えられる。貯蔵量は多いが,低レベルであるということは,慢性状態を示唆する。シリングテストは吸収不良の原因を確かめるのに効果的である。放射線で標識されたB12の尿中排泄が減少(5%以下)していれば吸収不良を示す。内因子と結合した標識B12により排泄が正常値(9%以上)に修正されれば,吸収不良は胃の内因子活性の喪失によるものである(しばしば真性悪性貧血)。内因子と結合したB12で排泄が修正されなければ,慢性膵炎,薬物(例,アミノサリチル酸),小腸疾患(盲係蹄症候群,空腸憩室,回腸疾患)が疑われなければならない。

 胆汁酸塩の腸内細菌による過度の脱抱合は,腸管内容物停滞や細菌増殖を起こす小腸疾患(例,盲係蹄症候群,憩室,強皮症)で起こり,14C標識グリココール酸呼吸検査で明らかにできる。検査は通常,不必要で高価であり,さらに実施できないことも多い。

 X線検査は非特異的であるかまたは診断に役立つ。上部消化管検査に引き続き小腸を検査していくと,粘膜ヒダのうすくなった膨張した小腸係蹄(セリアック病を示唆する)や,肥厚した粘膜ヒダ(ホウィップル病を示唆する),レリーフの粗大断裂がみえるが,これらの所見はただ吸収不良を示唆するにすぎない。診断所見は瘻孔,盲係蹄症候群またはいろいろな腸内部の吻合である;空腸憩室;上腸間膜動脈閉塞;またその粘膜像から腸管リンパ腫・強皮症・クローン病などが疑われたりする。腹部X線では,膵臓の石灰化(慢性膵炎の徴候)がみられる。ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影法)は慢性膵不全を同定するのに役立つが,通常は膵臓の石灰化で十分である。

 空腸の小腸生検は,ルーチン検査で,小腸細菌叢の微生物学的検査用のための空腸液標本が同時に採取できる。内視鏡による生検も適応であるが,十二指腸の下行部を越えたところで採取されなければならない。採取された粘膜標本は,虫眼鏡または解剖顕微鏡でざっと検査され,それから光顕または電顕で検査されて,組織のホモジェネートは酵素活性検査に供される。特異的診断には,ホウィップル病,リンパ肉腫,腸リンパ管拡張症,ランブル鞭毛虫症(栄養型が絨毛表面近くにみられる)がある。空腸の組織学的所見(絨毛状萎縮)も,セリアック病,熱帯性スプルー,疱疹状皮膚炎において異常を来す。

 膵機能検査には2種類ある;両方とも十二指腸への挿管を要する:ルンドテストでは,膵分泌が経口検査食によって間接的に刺激され,採取された十二指腸液中リパーゼ値を測定する。セクレチンテストでは膵分泌がセクレチン静注によって直接的に刺激される。挿管しないで済む膵機能検査としてベンチロミドテストが導入されたが,その精度と有用性については検討を要する。この検査は,合成ペプチドベンチロミドの膵酵素キモトリプシンによる分解に基づいている。パラアミノベンゼン酸の成分が吸収され,尿中に分泌される。精度は正常の胃排出能,正常の吸収能,正常の腎機能に依存する;ある種の薬物(例,スルホンアミド類,アセトアミノフェン)が偽陽性をもたらすことがある。

 特殊な検査があまり一般的でない原因による吸収不良の診断のために役立ち,それらはゾリンジャー・エリソン症候群における血清中ガストリン値と胃酸分泌,嚢胞性線維症における汗中Cl,無βリポプロテイン血症におけるリポプロテイン電気泳動,アジソン病における血漿コルチゾールである。

●検査



●治療



●薬物治療



●予後



●参考資料

メルクマニュアル第17版日本語版 - 吸収不良症候群











●データ









●臨床ガイドラインなど









●総説記事・文献









●ニュース・トピックス









●リンク&リソース









●主要サイト






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作成:2008.5.10 最終更新:2008.5.19 小菅博之
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